2021年2月26日金曜日

第一部 ヘリコプターはどのようにできているのか            1-1ヘリコプターの構成


  ヘリコプターにはローターやそれを動かすトランスミッション、エンジン、操縦系統のように回転したり上下・前後に動いたりするメカニズム部分がたくさんあります。このようにヘリコプターはメカニズムの塊で、これを理解するにはメカニズムの構成と仕組みを知る必要があります。そこでまず手始めに最も一般的なシングルローター・ヘリコプターSingle Rotor Helicopter:揚力を生み出すローターが一つの形式)の基本構成とその役割を勉強しましょう。後で主要構成品であるローターやエンジン、トランスミッション等のメカニズムも説明します。

ヘリコプターの基本構成  

 下は模式化したシングルローター・ヘリコプタの基本構成です。

(1) エンジン、トランスミッション、メインローター                 

機体中央上部にはヘリコプターの重要構成品であるエンジン、トランスミッションおよびメインローターが取り付けられています。
エンジンはヘリコプターの飛行に必要なパワーを生み出します。現在はジェットエンジンの一形態であるターボシャフトエンジンが主流ですが、小型ヘリコプタでは低価格なレシプロエンジンを搭載するものもあります。エンジンから出た回転出力はインプット・ドライブシャフトを介してトランスミッションに入ります。
インプット・ドライブシャフトはエンジン出力をトランスミッションに伝えると共に、組み立て公差や飛行中の荷重による機体変形で生じるエンジンとトランスミッションの微小な相互位置関係のズレ(これをミスアライメントと言います)を吸収する役割を負っています。インプット・ドライブシャフトとトランスミッションの間にはクラッチが挿入され、エンジン故障時にローターをエンジンとを切り離して自由回転させるオートローテーションを可能にしています。尚、レシプロプロエンジン機では始動時にもロータの接続を切ることで、重たいローターを回転させずエンジンを始動出来るようにしてあります。トランスミッションは通常3~5段のギアの組み合わせで構成された減速装置で、毎分6,60027,000で回転(6,600RPM27,000RPM)するエンジン出力を、ローターの回転に適した300RPM400RPMに落とすと共に、向きを90°変えてマストに伝える役割を担っています。
マストはブレードとハブで構成されるメインローターを、ほぼ水平面内で回転させる回転軸であると共に、ロータが生み出す推力やモーメントを機体側に伝える役割を担います。ヘリコプタの飛行に必要な全荷重を伝える非常に重要な構成品です。
ブレードは細長い翼で、回転することにより揚力を生み出します。最低2枚ですが4枚持つヘリコプタが多いです。最多はロシアのMil-268枚あります。枚数は機体重量を支える推力を生み出すのに必要な数と、振動及びコスト等の兼ね合いで決められます。一般に枚数が多いほど振動が少なくなりますがコストは高くなります。

マストはブレードとハブで構成されるメインローターを、ほぼ水平面内で回転させる回転軸であると共に、ロータが生み出す推力やモーメントを機体側に伝える役割を担います。ヘリコプタの飛行に必要な全荷重を伝える非常に重要な構成品です。
ブレードは細長い翼で、回転することにより揚力を生み出します。最低2枚ですが4枚持つヘリコプタが多いです。最多はロシアのMil-268枚あります。枚数は機体重量を支える推力を生み出すのに必要な数と、振動及びコスト等の兼ね合いで決められます。一般に枚数が多いほど振動が少なくなりますがコストは高くなります。

ハブは複数のブレードを束ねてマストに連結させる機構です。各ブレードで発生した揚力はハブに集められマストを介して機体に伝わります。又ブレードが必要とするピッチ(ブレードを長手軸周りに回転させて翼型の迎え角を増減させる運動)、フラップ(ブレードを回転面外の上下に羽ばたかせる運動)、リードラグ(ブレードを回転面内で回転方向に微小に前後する運動)運動の自由度を与える最も重要な構成品です。

尚、通常ロータは上から見て反時計回りに回転しますが、フランス系とロシア系のヘリコプタでは時計回りに回ります。 

() テールローター

 機体の後部にはテールローターが設けられています。トランスミッションから出力の一部を取り出して、テールローター・ドライブシャフトを介してギアボックスに伝わります。

ギアボックスは回転方向を90°変えて、テールローターを垂直面内で回転さーせます。中型以上のヘリコプターでは安全性を高める為に、垂直尾翼の上部にテールロータを設けて地上とのクリアランスを確保することが普通です。その時はドライブシャフトの方向を変換する為に、テールローター・ドライブシャフトの中ほどに中間ギアボックスが設けられます。

テールロータは小型のロータです。そのブレードが回転することで横方向の推力を発生します。これはメインロータの回転に伴って、反作用として機体が時計回りに回転するのを止める役割をします(これをアンチ・トルク機能と言います)。またその大きさを変化させることで、固定翼機の方向舵のように機首の方向(Heading)を変える働きもあります。更に、垂直尾翼と同様に機首を風向きに向けたり、ヨー運動(機首を左右に振る運動)を静めたり(ダンピング)する役割も持ちます。 

(3)ダイナミックコンポーネント

以上のエンジン、ローター、トランスミッション、ギアボックス、ドライブシャフト等がヘリコプターの心臓部であり、ローターおよびドライブシステム(Rotor & Rotor Drive System)と称します。ローターがヘリコプターの要であり、これとこれを駆動する装置の意味です。これらは固定翼機の主翼のように固定されたものではなく、全て1分間に数百回転から数千回転、エンジン等は1~2万回転位で動くものなので、ダイナミックコンポーネントとも言われます。

ヘリコプターはダイナミックコンポーネントが中心になって構成されています。ダイナミックコンポーネントは、動くが故の振動、騒音、疲労、不安定現象等の物理事象が密接に絡みます。従ってヘリコプタの設計ではこれらの事象を十分に検討してダイナミックコンポーネントを設計し、運用中も正しく整備することが重要です。


(4)構造、降着装置                                

ダイナミックコンポーネントの下には、それを支えると共に、人間や荷物を収容するキャビンテールブームがあります。燃料タンクもこのキャビン内に設けられます。キャビンやテールブームは構造とも言います。キャビンの下部には降着装置が取り付き、離着陸時の衝撃を吸収します。金属チューブの撓みを用いる簡単なスキッド形式や、衝撃吸収用油圧オレオに車輪を着け、地上走行が可能な車輪形式のものもあります。水上に降りる機体ではフロート式の降着装置を用います。

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