ヘリコプターはローターを回転して推力を発生させることで飛行します。ローターブレードは断面が翼型形状をしていて、これが推力を発生します。翼型が推力発生の要ですのでヘリコプターの性能を理解するには翼型の特性を理解しておく必要があります。今回はこの翼型特性について勉強しましょう。
翼型の一般的形状
図は最近のヘリコプター専用翼型です。上のAK-080Aはマッハ数が比較的高い翼端側用で、下のAK-100Dはマッハ数が低い内側用です。翼型の最大厚さを翼弦長との比で表し翼厚比(thickness ratio)と言います。AK-080Aは8%、AK-100Dは10%の翼厚比です。これらの翼型は下面に比べて上面の反りが大きい形状をしています。このような翼型を非対象翼型と言います。従来は上下面が対象な対象翼型が捩りモーメントを発生しないために多用されていましたが、近年では性能向上を目指して最大揚力が大きく、且つ比較的高いマッハ数まで抵抗の少ないこのような非対称翼型を採用する傾向にあります。
細長い翼型の丸みを帯びている側を前縁(leading edge)、尖っている側を後縁(trailing edge)と言います。前縁から気流を当てると翼型には気流に垂直な方向に揚力L(lift)、気流に流される方向に抗力D(drag)および翼型を回転させようとするモーメントM(moment)の3つの力(3分力)が生じます。
翼型の空力特性
AK-080Aの3分力特性の風洞試験結果を見てみましょう。翼型の3分力は単位巾当たりの力で表現しますが、それらは空気密度ρ、翼型が気流を迎える角度(迎角 attack angle)α、気流の速度Vおよび翼弦の長さ(翼弦長)cによって変化するので、そのままではそれらが異なるもの同士の評価が難しくなります。しかし、次のように無次元化すると迎角とマッハ数だけの関数になって、評価が容易になります。
Cl=L/(1/2・ρV2c)
Cd=D/(1/2・ρV2c)
Cm=M/(1/2・ρV2c2)
Cd=D/(1/2・ρV2c)
Cm=M/(1/2・ρV2c2)
Cl、Cd、Cmをそれぞれ揚力係数(lift coefficient)、抵抗係数若しくは抗力係数(drag coefficient)、モーメント係数(moment coefficient)と称します。
1、揚力特性
2.抗力特性
抗力係数はマッハ数が低いと失速角以内では略一定の値で、失速後は急増します。マッハ数が高いと迎角が少し増えただけでも抵抗係数は増加します。
3.モーメント特性
翼型が発生する空力モーメントは前縁を下げる頭下げモーメントのため、モーメント係数は負の値になります。抗力係数と同じように、マッハ数が低いと失速角以内では略一定ですが失速後は急増します。高マッハでは小さい迎角でもモーメント係数は増加する性質があります。このモーメントが過大になるとブレードが捩られ、操縦が困難になります。
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