小型で軽く高出力、かつ振動が少ないと言う特徴[1]をもったターボシャフトエンジンの出現が、ヘリコプターの実用価値を飛躍的に高めました。現状ではこれが標準的動力として広く使われています。ターボシャフトエンジンの特性を理解しておくことが、ヘリコプターの理解に必要です。
ターボシャフトエンジンは大型ほど効率が良い
ターボシャフトエンジンは大型ほど馬力当りに消費する燃料が少なく、重量当りに発生する馬力が大きい特性を持っています。
燃費特性
エンジン効率の指標の一つとして燃費特性を見てみましょう。下図は数種のエンジンの燃費特性(SFC)を比較したものです。SFCとはSpecific Fuel Consumptionの略語で、1馬力(HP)を1時間(Hr)発生し続けるのに要する燃料の量(lbs)です。単位はlbs/HP/Hrとなります。MKS単位系に換算すると1
小型ヘリコプターの代表的なエンジンであるロールスロイス250シリーズは、数百馬力の出力で、SFCはおよそ0.6 lbs/HP/Hr前後です。即ち、1馬力を1時間発生するのに約300gの燃料を消費します。これが大型のCH-47に使われる3,000~5,000HP級のT55シリーズでは0.5前後に下がり、V-22ティルトロータ用6,000HP級のT406では0.4 と、250シリーズの2/3になり、効率が向上しています。
尚、図には1,500~2,500HP級で新しいT800、MTR390、T700も載せました。従来型のPT6やT53が0.57~0.6であるのに比べて、これらは0.43~0.49とおよそ20%改善されていることが判ります。また、参考に載せた小型レシプロエンジンを250と比較すると、レシプロエンジンが35%ほど燃費に優れることが判ります。
重量特性
次に重量特性を見てみましょう。下図はエンジン出力と単位馬力あたりのエンジン重量の関係を示しています。
数百馬力クラスのエンジンでは1HP当り約0.4lbs(約200g)ですが、2,500~4,000HPでは半分の0.2lbs(約100g)で済み、4,500HP以上では更に軽くなります。大型程軽くて高出力で高効率なエンジンであることが明白です。
尚、参考に載せた小型レシプロエンジンは1.3~1.8lbs/HP(600~900g/HP)と、小型ターボシャフトエンジンの4倍位重たいことが判ります。
出力が温度、高度によって大きく変化する
ターボシャフトエンジンは吸い込んだ大気に燃料を加えて燃焼し、高温高速のジェット噴流を作り出してそのエネルギーを風車であるタービンで受けて軸出力を発生する装置です。従って、基本的に出力は吸い込む空気の質量に比例します。下表は出力レベルの異なる2種類の250エンジンの吸入空気流量と馬力の関係を示します。毎秒1lb(450g)の大気を吸い込むと約120~130HPの出力が得られることが判ります。
エンジン型式 |
最大出力 |
空気流量 |
流量当たり出力 |
250-C20B |
420
HP |
3.45
lb/sec |
122
HP/lb/sec |
250-C47B |
813
HP |
6.10
lb/sec |
133
HP/lb/sec |
大気は高空高温ほど薄くなります。従って、ターボシャフトエンジンの出力も高空高温ほど低下します。下図は250-C20Bエンジンの高度と温度による出力変化を示します。図には大気密度の変化に比例すると仮定した線も示しました。両者は概ね一致していることが判ります。
標準日(ISA)は海面上で420HPあったものが、20,000ftで215HP(51%)まで落ち込みます。大気密度比が53%まで下がるからです。同様に+20℃高温日の海面高度では大気密度比が93%に低下するので、出力も380HPと90%に落ち込みます。このエンジン出力の落ち込みはヘリコプターの性能に大きく影響するので、十分注意が必要です。
[1] ただし高価なことが欠点です。このためパーソナルユースを主要マーケットとする小型ヘリコプタではレシプロエンジンが使用されています。
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