2021年3月2日火曜日

2-1-2 高温日、低温日の大気の特性

 

前節で標準大気を見ました。海面上15℃の状態を基準として任意高度での圧力、密度を定めたものでした。しかし、真夏や真冬のヘリコプタの運用では、海面上でも15℃から大きく外れます。このため、標準日より温度の高い高温日、温度の低い低温日に対して大気条件を定めることが行われます。高温日、低温日の定義を理解しましょう。


高温日、低温日の定義  

高度0の海面上で大気圧はほぼ1気圧であっても温度は標準日と大きく異なることは良く経験することです。海面高度での圧力は1気圧として、温度を標準日の15℃(59°F)から変えたものが高温日、低温日という概念です。15を上回る日を高温日、下回る日を低温日と称します。

tを標準日との温度差として、

t>0 ;高温日(hot day)

t=0 ;標準日(standard day, STD day)

t<0 ;低温日(cold day)

となります。 

tとして良く使用される値は、±20℃ であり「標準日+20℃の高温日」(STD+20℃のhot day)等の言い方をします。


高温日、低温日の大気  

高温日、低温日の大気は標準日の式に温度⊿tの違いを入れて下記のようになります。

   t= 15+t-0.0065h                °C

 T= 288.15+t-0.0065h            °C

     P= 10,332(T/288.15)5.256            Kgf/m2

     ρ= P/287.04T                    Kgfsec2/m4


高温日、低温日の上空温度  

t=±20℃の高温日、低温日の大気温度と高度の関係は標準日のそれを、⊿tだけずらしたもので下図のようになります。


高温日、低温日の温度比、圧力比、密度比  

+20℃高温日、-20℃低温日の大気特性を上の式で求め、標準日の海面上の基準値との比を取って、図示したものが次の図です。


圧力比は高温日と低温日共に低空では差が少なく高空に行くに従って拡大するのに対して、密度比は低空で最大の違いが出て高空では差が縮小することが判ります。エンジン性能やヘリコプタの空力特性は空気密度に直接依存します。従って、ヘリコプターの性能・特性は低空程、高温日と低温日で差が出ることになります。低空はヘリコプターの主活動領域ですのでこの事実を認識しておくことが肝要です。

尚、±20℃の高温日、低温日は我が国や欧米でのヘリコプターの運用に略マッチしていますので国際的に多用されますが、中東諸国での運用にはマッチしません。遥かに高温環境での運用が要求されます。そこで米陸軍では独自に4,000ft、95°F(1,200m、35℃)の条件での性能要求を課しています。”高度1,200mで大気温度が35℃の条件で最低垂直上昇率が500fpm(2.5m/sec)以上であること”等の要求を出しています。



圧力高度Hpと高度hの関係

航空機の高度計は圧力を計測して算出する方式が多いので、高度を圧力高度Hpで表す場合があります。Hpとは標準日の圧力がその圧力と等しくなる高度のことです。従って標準日では圧力高度Hpは実際の高度hに等しいのですが、標準日以外ではHphとなります。非標準日のHphの関係式は次の式で与えられます。

    h = ((288.15+⊿t)/288.15)Hp

これを±20℃の高温日、低温日についてグラフで表すと次のようになります。


 

 

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