前節で標準大気を見ました。海面上15℃の状態を基準として任意高度での圧力、密度を定めたものでした。しかし、真夏や真冬のヘリコプタの運用では、海面上でも15℃から大きく外れます。このため、標準日より温度の高い高温日、温度の低い低温日に対して大気条件を定めることが行われます。高温日、低温日の定義を理解しましょう。
高温日、低温日の定義
高度0の海面上で大気圧はほぼ1気圧であっても温度は標準日と大きく異なることは良く経験することです。海面高度での圧力は1気圧として、温度を標準日の15℃(59°F)から変えたものが高温日、低温日という概念です。15℃を上回る日を高温日、下回る日を低温日と称します。
⊿tを標準日との温度差として、
⊿t>0 ;高温日(hot day)
⊿t=0 ;標準日(standard
day, STD day)
⊿t<0 ;低温日(cold day)
となります。
⊿tとして良く使用される値は、±20℃ であり「標準日+20℃の高温日」(STD+20℃のhot day)等の言い方をします。
高温日、低温日の大気
高温日、低温日の大気は標準日の式に温度⊿tの違いを入れて下記のようになります。
t= 15+⊿t-0.0065h °C
T= 288.15+⊿t-0.0065h °C
P= 10,332(T/288.15)5.256 Kgf/m2
ρ= P/287.04T Kgf・sec2/m4
高温日、低温日の上空温度
⊿t=±20℃の高温日、低温日の大気温度と高度の関係は標準日のそれを、⊿tだけずらしたもので下図のようになります。
高温日、低温日の温度比、圧力比、密度比
+20℃高温日、-20℃低温日の大気特性を上の式で求め、標準日の海面上の基準値との比を取って、図示したものが次の図です。
圧力比は高温日と低温日共に低空では差が少なく高空に行くに従って拡大するのに対して、密度比は低空で最大の違いが出て高空では差が縮小することが判ります。エンジン性能やヘリコプタの空力特性は空気密度に直接依存します。従って、ヘリコプターの性能・特性は低空程、高温日と低温日で差が出ることになります。低空はヘリコプターの主活動領域ですのでこの事実を認識しておくことが肝要です。
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