2021年3月1日月曜日

第二部 ヘリコプターの飛行性能はどのように定まるのか                         2-1大気の特性       2-1-1標準大気

  空中を飛行するヘリコプターは大気条件(密度、温度)によって性能・特性が変化します。従ってその性能・特性を理解し評価するには、大気についての知識が必要です。国際的な基準である標準大気について理解を深めましょう。


 標準大気を定める理由  

 気体である空気の密度は温度や圧力で変化します。高温では空気の分子運動が活発で、単位体積あたりの分子数が減って密度が下がります。また、高空より低空の方が圧力は高く、圧縮されて密度も大きくなります。

 このように高度や温度で大気の密度や圧力が変化し、それに応じてエンジンの出力や、ヘリコプターの性能も変化します。「ヘリコプターの性能は大気条件の関数である」、と言えます。しかしこれでは性能の表現や評価が定まりません。そこで航空工学の分野では標準大気というものを定めて条件を統一しています(ISA: International Standard Atmosphere 1964ICAO国際民間航空協定)。


標準大気の式  

これは海面高度で温度15℃(絶対温度288.15°C)、一気圧(1,013.25hP=10,332Kgf/m2)として、高度による温度変化の実測値(1,000mにつき6.5℃の低下)を基に、気体としての大気の状態方程式(理想気体を想定して温度、圧力、密度の間になりたつ関係式。P=ρRT)を用いて導き出された下記の温度、圧力、密度式です。Rは気体定数で287.04m2/sec2です。

    t=15-0.0065h                     °C

  T=273.15+t =288.15-0.0065h      °C

      P=10,332(T/288.15)5.256 = 10,332(1-0.0000225577h)5.256      Kgf/m2

      ρ=P/287.04T=0.12492(T/288.15)4.256    Kgfsec2/m4

 

ここでhmで表した高度、tTは大気温度と絶対温度、Pは大気圧力、ρは密度です。上式で任意の高度hにおける標準日の大気温度と圧力、密度が求められます[1]

 

海面高度における標準大気の特性(基準値)  

h=0とすると基準値である海面上の大気特性が求まります。それぞれt0T0P0、ρ0とすると、

    t0 = 15            °C

  T0 = 288.15       °C

  P0 = 10,332       Kgf/m2

  ρ0 = 0.12492      Kgfsec2/m4

 

エンジンの最大出力等の性能値は、この条件で表現するのが普通です。

 

温度比、圧力比、密度比  

任意の高度での温度、圧力、密度を基準値との比で表わしたものを、温度比、圧力比、密度比と言い、それぞれθ、δ、σと記します。標準大気では次のようになります。

  θ = T/T0 = 1-2.2558×10-5h

  δ = P/P0 =θ5.256

  σ =ρ/ρ0 = (P/P0)(T0/T) =θ4.256

 圧力比は温度比の5.256乗、密度比は温度比の4.256乗になることは興味深いことです。

 

標準大気の高度による特性変化  

下の図は上の式に従って標準大気の温度、圧力、密度の高度による変化を図表化したものです。





[1] 飛行試験、風洞試験等では試験時の温度と圧力を計測し、状態方程式ρ=P/8.314472Tで密度を求めます。

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