ヘリコプターはローターを回転して推力を発生させることで飛行します。ローターブレードは断面が翼型形状をしていて、これが推力を発生します。翼型が推力発生の要ですのでヘリコプターの性能を理解するには翼型の特性を理解しておく必要があります。今回はこの翼型特性について勉強しましょう。
翼型の一般的形状
翼型の空力特性
Cd=D/(1/2・ρV2c)
Cm=M/(1/2・ρV2c2)
ヘリコプターはローターを回転して推力を発生させることで飛行します。ローターブレードは断面が翼型形状をしていて、これが推力を発生します。翼型が推力発生の要ですのでヘリコプターの性能を理解するには翼型の特性を理解しておく必要があります。今回はこの翼型特性について勉強しましょう。
小型で軽く高出力、かつ振動が少ないと言う特徴[1]をもったターボシャフトエンジンの出現が、ヘリコプターの実用価値を飛躍的に高めました。現状ではこれが標準的動力として広く使われています。ターボシャフトエンジンの特性を理解しておくことが、ヘリコプターの理解に必要です。
ターボシャフトエンジンは大型ほど効率が良い
ターボシャフトエンジンは大型ほど馬力当りに消費する燃料が少なく、重量当りに発生する馬力が大きい特性を持っています。
燃費特性
エンジン効率の指標の一つとして燃費特性を見てみましょう。下図は数種のエンジンの燃費特性(SFC)を比較したものです。SFCとはSpecific Fuel Consumptionの略語で、1馬力(HP)を1時間(Hr)発生し続けるのに要する燃料の量(lbs)です。単位はlbs/HP/Hrとなります。MKS単位系に換算すると1
小型ヘリコプターの代表的なエンジンであるロールスロイス250シリーズは、数百馬力の出力で、SFCはおよそ0.6 lbs/HP/Hr前後です。即ち、1馬力を1時間発生するのに約300gの燃料を消費します。これが大型のCH-47に使われる3,000~5,000HP級のT55シリーズでは0.5前後に下がり、V-22ティルトロータ用6,000HP級のT406では0.4 と、250シリーズの2/3になり、効率が向上しています。
尚、図には1,500~2,500HP級で新しいT800、MTR390、T700も載せました。従来型のPT6やT53が0.57~0.6であるのに比べて、これらは0.43~0.49とおよそ20%改善されていることが判ります。また、参考に載せた小型レシプロエンジンを250と比較すると、レシプロエンジンが35%ほど燃費に優れることが判ります。
重量特性
次に重量特性を見てみましょう。下図はエンジン出力と単位馬力あたりのエンジン重量の関係を示しています。
数百馬力クラスのエンジンでは1HP当り約0.4lbs(約200g)ですが、2,500~4,000HPでは半分の0.2lbs(約100g)で済み、4,500HP以上では更に軽くなります。大型程軽くて高出力で高効率なエンジンであることが明白です。
尚、参考に載せた小型レシプロエンジンは1.3~1.8lbs/HP(600~900g/HP)と、小型ターボシャフトエンジンの4倍位重たいことが判ります。
出力が温度、高度によって大きく変化する
ターボシャフトエンジンは吸い込んだ大気に燃料を加えて燃焼し、高温高速のジェット噴流を作り出してそのエネルギーを風車であるタービンで受けて軸出力を発生する装置です。従って、基本的に出力は吸い込む空気の質量に比例します。下表は出力レベルの異なる2種類の250エンジンの吸入空気流量と馬力の関係を示します。毎秒1lb(450g)の大気を吸い込むと約120~130HPの出力が得られることが判ります。
エンジン型式 |
最大出力 |
空気流量 |
流量当たり出力 |
250-C20B |
420
HP |
3.45
lb/sec |
122
HP/lb/sec |
250-C47B |
813
HP |
6.10
lb/sec |
133
HP/lb/sec |
大気は高空高温ほど薄くなります。従って、ターボシャフトエンジンの出力も高空高温ほど低下します。下図は250-C20Bエンジンの高度と温度による出力変化を示します。図には大気密度の変化に比例すると仮定した線も示しました。両者は概ね一致していることが判ります。
標準日(ISA)は海面上で420HPあったものが、20,000ftで215HP(51%)まで落ち込みます。大気密度比が53%まで下がるからです。同様に+20℃高温日の海面高度では大気密度比が93%に低下するので、出力も380HPと90%に落ち込みます。このエンジン出力の落ち込みはヘリコプターの性能に大きく影響するので、十分注意が必要です。
[1] ただし高価なことが欠点です。このためパーソナルユースを主要マーケットとする小型ヘリコプタではレシプロエンジンが使用されています。
前節で標準大気を見ました。海面上15℃の状態を基準として任意高度での圧力、密度を定めたものでした。しかし、真夏や真冬のヘリコプタの運用では、海面上でも15℃から大きく外れます。このため、標準日より温度の高い高温日、温度の低い低温日に対して大気条件を定めることが行われます。高温日、低温日の定義を理解しましょう。
高温日、低温日の定義
高度0の海面上で大気圧はほぼ1気圧であっても温度は標準日と大きく異なることは良く経験することです。海面高度での圧力は1気圧として、温度を標準日の15℃(59°F)から変えたものが高温日、低温日という概念です。15℃を上回る日を高温日、下回る日を低温日と称します。
⊿tを標準日との温度差として、
⊿t>0 ;高温日(hot day)
⊿t=0 ;標準日(standard
day, STD day)
⊿t<0 ;低温日(cold day)
となります。
⊿tとして良く使用される値は、±20℃ であり「標準日+20℃の高温日」(STD+20℃のhot day)等の言い方をします。
高温日、低温日の大気
高温日、低温日の大気は標準日の式に温度⊿tの違いを入れて下記のようになります。
t= 15+⊿t-0.0065h °C
T= 288.15+⊿t-0.0065h °C
P= 10,332(T/288.15)5.256 Kgf/m2
ρ= P/287.04T Kgf・sec2/m4
高温日、低温日の上空温度
⊿t=±20℃の高温日、低温日の大気温度と高度の関係は標準日のそれを、⊿tだけずらしたもので下図のようになります。
高温日、低温日の温度比、圧力比、密度比
+20℃高温日、-20℃低温日の大気特性を上の式で求め、標準日の海面上の基準値との比を取って、図示したものが次の図です。
空中を飛行するヘリコプターは大気条件(密度、温度)によって性能・特性が変化します。従ってその性能・特性を理解し評価するには、大気についての知識が必要です。国際的な基準である標準大気について理解を深めましょう。
気体である空気の密度は温度や圧力で変化します。高温では空気の分子運動が活発で、単位体積あたりの分子数が減って密度が下がります。また、高空より低空の方が圧力は高く、圧縮されて密度も大きくなります。
標準大気の式
これは海面高度で温度15℃(絶対温度288.15°C)、一気圧(1,013.25hP=10,332Kgf/m2)として、高度による温度変化の実測値(1,000mにつき6.5℃の低下)を基に、気体としての大気の状態方程式(理想気体を想定して温度、圧力、密度の間になりたつ関係式。P=ρRT)を用いて導き出された下記の温度、圧力、密度式です。Rは気体定数で287.04m2/sec2です。
T=273.15+t =288.15-0.0065h °C
P=10,332(T/288.15)5.256 = 10,332(1-0.0000225577h)5.256 Kgf/m2
ρ=P/287.04T=0.12492(T/288.15)4.256
Kgf・sec2/m4
ここでhはmで表した高度、tとTは大気温度と絶対温度、Pは大気圧力、ρは密度です。上式で任意の高度hにおける標準日の大気温度と圧力、密度が求められます[1]。
海面高度における標準大気の特性(基準値)
h=0とすると基準値である海面上の大気特性が求まります。それぞれt0、T0、P0、ρ0とすると、
T0
= 288.15 °C
P0
= 10,332 Kgf/m2
ρ0 = 0.12492 Kgf・sec2/m4
エンジンの最大出力等の性能値は、この条件で表現するのが普通です。
温度比、圧力比、密度比
任意の高度での温度、圧力、密度を基準値との比で表わしたものを、温度比、圧力比、密度比と言い、それぞれθ、δ、σと記します。標準大気では次のようになります。
θ = T/T0 = 1-2.2558×10-5h
δ = P/P0 =θ5.256
σ =ρ/ρ0 = (P/P0)(T0/T)
=θ4.256
標準大気の高度による特性変化
下の図は上の式に従って標準大気の温度、圧力、密度の高度による変化を図表化したものです。
[1] 飛行試験、風洞試験等では試験時の温度と圧力を計測し、状態方程式ρ=P/8.314472Tで密度を求めます。
ヘリコプターのローターは、固定翼機の翼、プロペラ、エルロン、エレベータの働きを一つで行っています。ローターがヘリコプタを技術的に成立させる要です。このようなローターの働きがどのようなメカニズムで実現されているのか理解しましょう。
ローターヘッドの構造
図はヘリコプターのローターヘッドの典型的な構成です。各ブレードは、フラッピングヒンジ、フェザリングヒンジ、リードラグヒンジの3つのヒンジを介してマスト(ローター回転軸)に連結されています。これらのヒンジを持ってブレードを支えている部分をハブと言います。
フラッピングヒンジはブレードが上下にはばたく(フラッピング)運動を許し、フェザリングヒンジは、ブレードのピッチ(フェザー)運動の回転中心となり、リードラグヒンジはブレードが回転面内で前後(リード・ラグ)運動することを許します。ハブの構成は下図のようになっています。
フェザリング軸周りにはピッチホーンが、リードラグヒンジ周りにはリードラグダンパーが取り付いています。
ローターはヘリコプターの飛行と操縦に重要な、以下の三つの働きをします。
①
推力を発生して機体重量を支える。またその大きさを変化して上下運動を可能にする。
②
ローターを前傾させて機体抵抗に抗する推進力を発生する。また、前後に傾けて、ピッチングモーメントを発生し機体の前・後の姿勢を変える。
③
ローターを左右に傾けて横進力を発生させる。また。ローリングモーメントを発生し機体の左・右の傾きを変える。
各ブレードのピッチホーンはピッチリンクを介して、ローター操縦機構であるスウオッシュプレートに接続されています。
スウオッシュプレートは上下2枚の円盤で構成され、上側はローターと一緒に回転し、下側は回転しません。これらは、球面ベアリングで支えられたジンバル機構で、マスト周りのどの方向にも傾くことができます。更に、球面ベアリングはマストに対して、上下できる構造をしています。下側スウオッシュプレートには油圧アクチュエータが連結され、操縦桿の操作で上下方向の移動と前後および左右へ傾くことができます。
上下運動によってブレードは回転位置によらずにピッチ角が増減します。これをコレクティブ・ピッチと言います。”コレクティブ”とは”一斉に”と言う意味です。
スウオッシュプレートの前後、または左右の傾きによってブレードのピッチは一回転に一回の割合でピッチが正弦波状に変化します。これをサイクリック・ピッチと言います。”サイクリック”とは”定期的に”と言う意味です。
次にこれらのピッチ変化によるローターの挙動を見てみましょう。
コレクティブ・ピッチを与えるとブレードは一斉に迎角が増えるので、推力が増えて遠心力と釣り合うまで、フラッピングヒンジを中心にして翼端が持ち上がります。この運動をフラッピングと言います。ブレードの回転軌跡は横から見ると丁度漏斗型(コーン)形状に見えます。それでこのフラッピング運動をコーニングと言います。ブレード先端が作る回転面はロータマストに垂直です。
ヘリコプターはローターを回転して推力を発生させることで飛行します。ローターブレードは断面が翼型形状をしていて、これが推力を発生します。翼型が推力発生の要ですのでヘリコプターの性能を理解するには翼型の特性を理解しておく必要があります。今回はこの翼型特性について勉強しましょ...